THE VOLVO
LIFE JOURNAL

あけましておめでとうございます!Gott nytt år! 2021/01/06

犬も歩けば森に当たる!藤田りか子の“北欧”犬通信 vol.2

犬と暮らす皆さんの新年の抱負は?





スウェーデンにもある「新年の抱負」



スウェーデンでも一応元日は休日になります。ただし日本のような正月三が日はありません。もし1月2日がウィークデーであれば、その日からふつうに仕事が始まります。スウェーデンに住む日本人には、これがなんともあっけなく感じられるものです。ただし、12月31日は、お正月イブ(Nyårsafton)とスウェーデン語ではいうのですが大晦日ですね、も休日ですし、今年のように週末と正月三が日が重なっていれば、日本のお正月休暇とほとんど変わりがありません。

盛大にお祝いをしたクリスマスと対照的に、とてもあっけないスウェーデンのお正月ですが、「新年の抱負(Nyårslöft)」を掲げる人もいます。たいてい大晦日に誓うもので、元旦ではないところが、やはりちょっと日本と違うところかも…? 我々犬と暮らす者も、今年は!と犬にかかわる目標を何か定めたりするものです。

新年が明けても、お部屋はまだクリスマスムード。スウェーデンのクリスマスは1月を過ぎても続きます。1月13日にクリスマスツリーが片付けられます。



"今年こそ呼び戻しを完璧にする!"

"他の犬に向かって吠えないようトレーニングをする!"

"ノーズワークにトライをしてみる!"

などなど。こんなふうにトレーニングやしつけに関した目標を立てる人が多いかもしれません。それだけ犬と真剣に向き合っていることの証でもあります。

緻密な計画を立てるのが得意

「目標を立てたら、まずはトレーニングプランを」

と犬経験の豊富な人なら言うものです。その点で、他の欧米人に比べてもスウェーデン人のプランの立て方はすごく緻密で綿密です。決して結果を急がず、ステップ・バイ・ステップ。おそらく国民性もあるでしょう。それは犬の世界だけではなくモノ作りにもあらわれているのは、はみなさんもご存知ですね。よいものをコツコツと作り上げてゆく。

たとえば呼び戻しのトレーニング計画なら以下のようなプランをたててゆきます。

「プラン1:呼び戻しをする場所は自宅の庭。距離10m。これを3回連続でクリアしたら距離を15mに伸ばす」

「プラン2:呼び戻しする場所は公園。距離15m。これを3回連続でクリアしたら距離を20mに伸ばす」

などなど…。

距離を伸ばしたり、場所を変えたり、あるいは犬の気が散るようなシナリオをセッティングしながら、一回の練習セッションにつき一つずつバリエーションをいれて、コツコツとトレーニングを続けます。中にはトレーニング・ログをつける「オタク」な飼い主さんもいます。できあがりはすごくハイレベルなものに仕上がるのですが(シカを追いかけそうになった犬を呼び戻しするなど!)、スタート自体は上にも書いた通り、実はとても単純で簡単なことから始めています。誰でもできることですよね。ただし、トレーニングする人が途中で飽きないことが大事です!結果を求めてセカセカしているわけではないので、みんな気長にやっているような気もします。そもそも学校の授業もそんな感じでした。それに比べると、日本の学校では受験に備えて、と最初からやたらと難しい問題を生徒に解かせようとしていたなぁと記憶しています。



ドッグスポーツに打ち込むのはスウェーデンではほとんど国民的ホビー!オビディエンス競技会での様子



スウェーデンはドッグスポーツの競技会もとても盛んなのですが、おそらく彼らの計画性と緻密性ゆえに、競技会を目標にして犬をトレーニングする、というホビーが国民性にぴったりはまっているのかもしれません。緻密さを面倒がるよりもむしろ楽しむようなところがあります。競技会にでるためには、詳細なトレーニングプランが必要となります。気まぐれに、これも、あれも、と適当に練習するだけでは、完璧なパフォーマンスは出来上がりません。ちなみに、ドッグスポーツの競技会はおそらく年間1000イベントぐらいは行われているはずです。スウェーデンケネルクラブの統計では参加する犬の数は年間で約70000頭とも!犬とのスポーツはスウェーデンでは一つの国民アクティビティとして存在します。おそらくこれは狩猟が盛んなためもあるでしょう。

今年の目標を犬友達といっしょに楽しむ

さて私も犬友達といっしょに今年の抱負を誓いました。皆でいっしょにレトリーバーの競技会に秋に出場することです。アシカという黒いラブラドール・レトリーバーをトレーニング、秋という10ヶ月先のことを1月から練習を重ねていくという計画です。やはりこれもかなり気長ですね!まずはミッドサマー(夏至祭、これもスウェーデンでは大事なイベント!)までに、なんとか形にしてゆくべき、と2週間に一度皆で集まり、練習会をすることに決めました。練習会となる場所は、森の中や、休耕地や牧草地など、郊外の大きな敷地で行います。



スウェーデンにおける犬生活は、森が舞台といっても過言ではないでしょう。人々はここに散歩にきて、ここでトレーニングをして…。たくさんの楽しい思い出がここで培われるのです。



このような練習会を催す時、リーダー核となる人は一応存在しますが、皆がイニシアティブを取ることができるのは、スウェーデンらしさだと思います。誰かがお膳立てをしてくれるのを待つのではなく、メンバー一人一人がそれぞれの意見を持ち合い、積極的に参加していっしょに作り上げてゆきます。たとえば練習をする場所をお互いに提案しあったり、その日にやることを決めたり。というか、皆があまりにも積極的すぎて時に「誰の意見を優先すべきか!」とやや緊迫した(?)雰囲気にもなったりしますが、他者との衝突を避けたがるスウェーデン人は(このへんはとても日本人とよく似ています)、その点なんとかうまく迂回したり妥協したりしながら、グループの繋がりを保ちます。


どんなふうに私たちが犬との練習を仲間と同士で楽しんでいるか、その経過をまた皆さんにシェアしたいと思います。楽しみにしていてくださいね。





藤田りか子

藤田りか子

ドッグ・ライター、犬学セミナー講師。スウェーデン・ヴェルムランド県の森の奥、一軒家にてカーリーコーテッド・レトリーバーのラッコとラブラドール・レトリーバーのアシカと住む。人生の半分スウェーデン暮らし。趣味はドッグスポーツ。ノーズワークとガンドッグ・フィールド・トライアルのコンペティター。アメリカ・オレゴン州立大学を経てスウェーデン農業科学大学野生動物管理学部卒業。生物学修士(M.Sc)。犬のブログサイト「犬曰く」運営者。主な著書に「最新世界の犬種大図鑑」(誠文堂新光社)など。



文と写真:藤田りか子