THE VOLVO
LIFE JOURNAL

春うららは愛犬とアイスフィッシング! 2021/03/24

犬も歩けば森に当たる!藤田りか子の“北欧”犬通信 vol.3



3月。この頃スウェーデンでは日がグングンと伸び、日毎に明るさが増してきます。たったこの間まで薄暗い日々を過ごしていたのが嘘のようです。シジュウカラのピーチピーチという歌声、キツツキがトトトトトと幹をたたく音が森にこだまする。犬の散歩もこれまでは太陽がのぼりきった9時ぐらいになってやっと出かけたものですが、今となっては7時でもOK!暗い冬が終わり緑萌え、と言いたいところですが、ただし気温の方は、まだ氷点下!年にもよりますが、まだあたりは一面銀世界の時もあるのです。


しかし寒さというのは実はそれほど気になるものではありません。やはり太陽の光こそが北欧の人のウェルネスを向上させる最重要要素だと思います。そして日差しの明るさがもどってきた氷点下の春こそ、アイスフィッシングには最高の季節。アイスフィッシングというのは、氷に穴をあけてそこから魚を釣ること。日本ではワカサギ釣りが有名ですね。スウェーデンではワカサギではなくアボッレ (Abborre) とスウェーデン語で呼ばれているヨーロピアン・パーチを釣るのが一般的です。



なかなか大きなパーチが釣れた。今日の夕食に。スウェーデン人は皆この魚を食べるのも大好き!



アイスフィッシングは北欧ではどこでも人気があるアウトドア遊びで、特に週末天気の良い日には、凍った湖上に家族、友人同士が集っているのを見かけます。私もパートナーのカッレと犬たちを連れて、「今晩の夕食を釣るぞ!」と意気込み湖にでかけました。我が家から徒歩でたった10分ほどの距離。ここは夏になれば犬たちとよく水遊びをしたり、ボートを出したり、あるいは湖岸で焚き火をしてソーセージを焼くなど、一年中お世話になっている湖です。


春のアイスフィッシングで気をつけなければならないことは、湖が完全に凍っているかどうかということ。割れた氷から落ちて溺れて亡くなる人は決して少なくありません。氷の厚さ20cmあれば氷上を車で走れるといいますから、それぐらいを目処にして安全を確認してから湖の沖に向かって歩いて行きます。犬たちも氷上を上手に歩くものです。氷の上に雪がつもっているところを意識的に選択して歩いていますね。滑りにくいからです。彼らもやはりツルツルとして足が囚われる感覚は好きではないようです。



氷の厚さが20cmなら車も運転できる。氷上湖面を車でドライブして遊ぶ人は多い。(ちなみに後ろの車はボルボです!)



釣りの間は、アシカ(筆者の犬その1)はノーリードで、ラッコ(筆者の犬その2)にはロングリードをつけて。ラッコはアシカほど従順な犬ではなく勝手にあちこち走るので、安全のためにリードでコントロールしておきます。うっかり氷が割れやすいところに行ってしまうなんてこともあります。一見どこもしっかりと氷がはっているように見えても、水の流れがあるようなところでは氷が薄かったりするので油断は禁物です。


スウェーデンでは日本のようにシェルター(テントのようなもの)を立ててアイスフィッシングはせず、降っても照っても自然の中に身をまかせ、というスタイルで釣りをします。まずアイスドリルをグルグルと回し氷に穴をあけます。水に到達するとジュワーと氷混じりの水が溢れてきます。なぜか犬たちは、その度に穴から何かでてくるのかと必ず鼻をつけて確認をしにやってきます。穴があいたところで、椅子のついたリュックサック(スウェーデンのアウトドアライフの定番アイテムですね)をもってきて、どっこいしょと座る。釣り糸を垂らし、湖の底まで到達したら、30cmほどクルクルとリールを巻き戻します。ひょいと手首のスナップを効かせて数秒じっとする。そんな動きを何回も繰り返しながら、ひたすら魚がかかるのを待つだけ。



釣り糸を垂らしたら、ひたすらこの穴をじーーっと見つめる。いまか、いまか…。時に太陽を感じるために顔をあげるけど!



筆者のパートナーのカッレの従兄弟レイフさんも一緒に。ちなみにレイフさんは我が家の近くにあるボルボ・コンストラクション・エクイップメントで働く。趣味は釣り。彼がアイスフィッシングをすると、どんどん魚が釣れる!



真っ白な氷原のど真ん中に座って、春の日差しを体全体に感じながら無心にアイスフィッシングにひたる。人生はとことん楽しむべし、これぞスウェーデン流ライフです。私はアイスフィッシングがそれほど上手ではないのですが、釣れても釣れなくてもあまり気にせず。自然の中に出て何かをしたということ自体が充実感を与えてくれます。


釣っている間は、アシカもラッコもカッレと私の間を走りながらいったりきたり。太陽は照っていても気温はマイナス8℃。寒いから体を動かしていたいのと、実は少し退屈をしているのかもしれません。なぜかというと、氷上には犬にとって何も面白いにおいがないからです。彼らはできるなら植生がある岸辺に行こうとします。やはりにおいのしないところは犬にとっては砂漠なのかもしれません。10分間釣り糸を垂らしても何もかからなければ、次の穴作りのために移動。その度に犬たちは大喜び!



さすがに寒いと感じるときもある。そんな時は犬を抱きしめて暖をとりながら釣り!まわりは犬の足跡だらけ!そう、私たちが氷の穴をじっと見つめている間、彼らはたいていそのへんをフラフラ走り回る。



そんなことを繰り返しながら、最後はフィーカ(コーヒータイム)とソーセージ焼き。これもアウトドアライフには欠かせませんね。氷上ですから、焚き火はできませんが、スウェーデンには「一回バーベキュー」というアルミ製の使い切りバーベキューセットがあります。それに火をともしソーセージを焼いて、犬たちにも少しわけて一緒に食べてお開きです。



フィーカ、そしてソーセージを焼く。スウェーデンのアウトドアの定番。我々が食べている間、ラッコは敷物の上にてお行儀にしている!



藤田りか子

藤田りか子

ドッグ・ライター、犬学セミナー講師。スウェーデン・ヴェルムランド県の森の奥、一軒家にてカーリーコーテッド・レトリーバーのラッコとラブラドール・レトリーバーのアシカと住む。人生の半分スウェーデン暮らし。趣味はドッグスポーツ。ノーズワークとガンドッグ・フィールド・トライアルのコンペティター。アメリカ・オレゴン州立大学を経てスウェーデン農業科学大学野生動物管理学部卒業。生物学修士(M.Sc)。犬のブログサイト「犬曰く」運営者。主な著書に「最新世界の犬種大図鑑」(誠文堂新光社)など。



文と写真:藤田りか子