THE VOLVO
LIFE JOURNAL

スウェーデンのくら〜い冬の犬散歩はリフレクターとヘッドライトで克服! 2021/12/15

犬も歩けば森に当たる! 藤田りか子の“北欧”犬通信 vol.8

リフレクター犬着をつける犬たち



寒さより暗さ!スウェーデンの冬

スウェーデンに住んでいると聞いて多くの日本人は

「冬は寒いでしょう?」

と気の毒がってくれます。ところが外気温の低さは、そんなに気になりません。いや、ややもすると東京に住んでいた頃の方が寒さは身にしみていたかも!屋内でも廊下などに出ると暖房が効いておらず、家にいながらにして厚着をしていたものです。そしてコタツから出てトイレに行くことがなんと億劫だったことか。スウェーデンにコタツはありませんが、家屋の断熱と暖房システムが優れているので、家中、トイレも風呂場も含め、冬でもポカポカ、部屋では半袖で過ごしているほどです。

話が外れてしまいました。今回はスウェーデンの暖房事情ではなく冬の暗さと犬の散歩について、です。そう、スウェーデンの冬で何がつらいって、この暗さなんですね。スウェーデンの最北部だと、太陽をみない期間が2ヶ月ほどあります。私の住んでいるところはそれよりだいぶ南に位置しているのでそこまで暗くはないのですが、11月から2月までは朝の9時ぐらいにならないと明るくならず、夕暮れは昼の3時。通勤している人は、真っ暗な朝にでかけて、真っ暗な夕方に帰る、まさに暗黒状態の生活をしています。こんな状況ですから日本のように「明るいうち」とか「暗くなってから」が活動する際の基準にはなりません。犬の飼い主にしても同様です。真っ暗でもこれまで通り、朝あるいは夕方の長い散歩は欠かしません。



リフレクター犬着をつける犬たち

「早く散歩に行こうよ!」と3頭の犬たちに急かされる。暗がりでも車のヘッドライトの反射で光るように犬たちにはリフレクター犬着をつける



ヘッドライトをつけて散歩!

正直いうと、スウェーデンに移り住んだ頃は、「日がないのに犬の散歩は億劫…」と思ったものです。周りが森だらけのど田舎ですから、街灯というものがなく通りは真っ暗。暗所恐怖症の人は、散歩すらできないかもしれません。私は懐中電灯を片手にしぶしぶ歩いていました。

しばらくして、とてもいいツールがあることに気がつきました。

「ヘッドライトをつけて歩けばいいのだ!」

そういえば田舎道で乗馬をしている少女たちがヘルメットにヘッドライトをつけて乗っているのを冬の夕方によく見かけます。日本から来たばかりだったので、ヘッドライトをつけるという発想はさすがにありませんでした。ただしその頃のヘッドライトは充電式ではなく、常に電池を補充しなければならず、そのうち「ヘッドライトも懐中電灯と同じぐらい面倒臭いなー」思うようになってきました。いざ使おうと思ったら、電池が切れた、おまけに替えの電池もない、ということがしばしば。



ヘッドライトをつけたラッコ

「僕はヘッドライトをつけて歩きたくないよー、おかあちゃん、自分の頭につけてください」とラッコ。「はい」と私。



私の暗がり犬散歩に革命が起きたのは充電式LEDヘッドライトを手に入れてから。散歩へのモチベーションが一気にアップ!夏のときと同じ気軽さで冬でも外に出られるようになりました。森の小道であれば犬を放して歩くこともあるのですが、ヘッドライトに反射する彼らの目のおかげでどこにいるか位置を確かめることができます。時にはそうやって藪に潜む鹿を発見することもあります。鹿の目もヘッドライトによって反射するのですね。しかし鹿を見つけたら大急ぎで犬たちを呼び戻し!鹿を追いかける癖をつけさせたくないからです。犬より私が先に鹿に感づくことができるのも、ヘッドライトのおかげ。大袈裟に聞こえるかもしれませんが、「文明の力」というのは本当にありがたい!



ヘッドライトよりもさらに暗がりで目立つリフレクター

ヘッドライトは街灯のない田舎の必需品ですが、都市や郊外に住む人も暗がり安全対策をしています。それがリフレクター。スウェーデンでは非常に普及しています。私が移り住んだのはかれこれ30年近く前になりますが、その頃から当たり前のアイテムでした。子供用の冬用ジャケットにはリフレクターがすでに縫い付けられているし、大人もリフレクターのついたズボンやジャケット、帽子あるいはリフレクターベストなどを身につけています。連れている犬にももちろんリフレクター!リフレクタージャケットはもちろん、リフレクター首輪、リードなどペットショップにいくと豊富な品揃えを見ることができます。

企業の宣伝としてもらえるフリーのグッズにも、会社のロゴをあしらったリフレクターはスウェーデンでは珍しくありません。もしかしてみなさんは、グリミスのリフレクターをご存知かもしれません。ムーミンなどいろいろな可愛いモチーフを揃えたキーホルダータイプのリフレクターは日本でも最近人気です。グリミスは実はスウェーデンのメーカーなんですね。なるほど、リフレクターに力を入れている国ならでは!



ボルボリフレクター



ボルボリフレクター

ボルボ・カー・ジャパンの本社に遊びにいったときにいただいたグリミスのボルボリフレクター(非売品)。犬とのお散歩用に。限定品だから貴重!!こんなふうにジャケットのジップにつけておく。歩く度に揺れるので、暗がりでも歩行者の存在を知らしめることができる。



犬友達といっしょに散歩

犬友達といっしょに散歩。冬はリフレクターのついたジャケットを身に着ける。蛍光色のジャケットは、道路工事の人のユニフォームだけにあらず。一般人も散歩用ジャケットとして普通に使用している。



暗さの中でのトレーニング

仕事が終わって、犬友達と集い暗さの中でのトレーニング。この時期、暗がりでの犬トレーニングは当たり前!時間はまだ17時。犬や人についているリフレクターは車のヘッドライトによってこのように暗闇の中で光る。



リフレクターグッズ

左:ペットショップにあるリフレクターグッズ。リードやハーネス、首輪など。
右:スウェーデンの獣医クリニックにて。フードと共にペット用品が売られている。秋からリフレクターグッズだけのコーナーが設けられる。



リフレクターぐらいで暗がりの交通安全を維持できるのか、と思われるかもしれませんが、これは暗闇を運転して実際にリフレクターの反射を見たことがある人には明らかです。ヘッドライトが当たるとピカーと光り、遠くからでもはっきりわかります。私も暗い道の運転で何度も歩行者や犬が付けているリフレクターに助けられました。スウェーデン交通局でもリフレクターをつけて歩くことの大切さをウェブサイトに記しています。それによると、暗闇で暗色の服を着ているだけだと、ロービームに照らされても20-30mまで近づかないとドライバーには見えないということです。明るい色(白など)の服をきていれば60m。リフレクターをつけていればなんと125m先から見えるとのこと。さらに体の低い部位につけておくとよりドライバーに気づいてもらいやすくなります。

スウェーデンのリフレクターを用いた交通安全対策は、日本よりかなり進んでいるという印象を持っています。しかし暗がりにおける事故の起きやすさは、日本でも状況は同じです。日が短くなる10月から12月にかけて、さらに17時から19時台に死亡事故がもっとも多く発生していることが政府統計で示されています。



皆さんも仕事が終わったあと「暗いから…」と言わず、ぜひリフレクターで安全対策をして夜の散歩にでかけてくださいね。犬にとって暗さは関係ありません。飼い主との散歩はとても大事な時間です。



藤田りか子

藤田りか子

ドッグ・ライター、犬学セミナー講師。スウェーデン・ヴェルムランド県の森の奥、一軒家にてカーリーコーテッド・レトリーバーのラッコとラブラドール・レトリーバーのアシカと住む。人生の半分スウェーデン暮らし。趣味はドッグスポーツ。ノーズワークとガンドッグ・フィールド・トライアルのコンペティター。アメリカ・オレゴン州立大学を経てスウェーデン農業科学大学野生動物管理学部卒業。生物学修士(M.Sc)。犬のブログサイト「犬曰く」運営者。主な著書に「最新世界の犬種大図鑑」(誠文堂新光社)など。



文と写真:藤田りか子