THE VOLVO
LIFE JOURNAL

スウェーデンでどんな犬種が人気? 2022/02/16

犬も歩けば森に当たる! 藤田りか子の“北欧”犬通信 vol.10

犬



みなさん、スウェーデンでは今どんな犬が人気なのか、興味を持ったことはありませんか?日本と同じトレンドなのか、それとも全く異なるものなのか?

毎年1月、スウェーデンのケネルクラブ(血統犬種の管理、個体を登録する機関)から、前年度の新規登録数統計が発表されます。その年に新しく登録された犬の数が犬種別で示されるので、この統計をみると、どんな犬が人気なのか犬種のトレンドを知ることができます。日本においても、同じような統計がジャパン・ケネルクラブからも出されています。

ならばこの二つの統計を並べて2カ国の人気犬種事情を比較考察してみるのはいかがでしょう?!



大型犬人気のスウェーデン、小型犬人気の日本

以下にスウェーデンと日本の2021年新規登録犬種別順位を示します。





これをみての通り、スウェーデンと日本の人気犬種が驚くほど異なるものだということがわかりますね!日本では人気のプードル(プードルでもトイプードルですね)が、スウェーデンではベスト20にも入っていません。逆に、日本ではレアである、あるいは存在すらしない犬種がスウェーデンでは普通に見られる… 興味は尽きません。そう、犬種順位を比較することで、その国の犬文化とか犬との付き合い方などが垣間見ることができるんです。なので、私はよくいろいろな国の犬種登録数統計をチェックしています。

スウェーデンと日本の犬種トレンドで一番大きく異なる点は、犬のサイズです。日本ではトップ20がほとんど小型犬、あるいは中型犬で占められており、大型犬といえば2種類のレトリーバーのみ(ゴールデンレトリーバーとラブラドール・レトリーバー)。一方で、スウェーデンはほぼその逆、大型犬〜中型犬が多数派で、小型犬はマイノリティ。



レトリーバーがスウェーデンで好かれる理由

スウェーデンの人気ナンバーワンは、ラブラドール・レトリーバー(以下ラブ)です。10年以上にわたってトップの座、不動の人気を誇っています。確かにスウェーデンではどこにでもいる犬種です。人気の理由は、飼いやすさ、気質のよさ、でしょう。それからドッグスポーツが庶民の趣味として盛んですから、トレーニングしやすいという意味でも人気です。例にもれず私も2頭のラブの飼い主ですし、その2頭でドッグスポーツを楽しんでいます。

ラブのみならずスウェーデンではレトリーバーがとても人気です。おそらく国民性が関係しているのではないかな、とも考えています。スウェーデン人は概して争いごとが好きではありませんし、何事も穏便に平和に、がモットー。このスウェーデン人気質にマッチするのが、レトリーバーともいえます。彼らには疑い深いところはなく、愛想はよし。いつもポジティブで朗らか。わざわざ気質の難しい犬を選ぶより、社会に受け入れられやすい犬との方がよりハーモニックに暮らせる、というわけです。

2位にはゴールデン・レトリーバーが入っていますし、12位にはフラットコーテッド・レトリーバーが。このレトリーバーは日本でも飼われていて、最近ではだいぶ知られるようになりましたが、一般的な犬種と呼ぶにはまだまだほど遠いです。世界でもフラットコーテッドレトリーバーがこんなに人気なのは唯一スウェーデンなんですね。



レトリーバー

スウェーデンではレトリーバー犬種がとても人気。世界でもっともフラットコーテッド・レトリーバーが人気のある国でもある。



狩猟犬種の多さもスウェーデン文化を物語る

スウェーデンの人気トップ20犬種の中でみなさんが見たことも聞いたこともない犬種といえば、イェムトフンド、デニッシュ・スウィディッシュ・ファームドッグ、ドレーベル、フィニッシュ・スピッツではないでしょうか。いずれも北欧諸国原産の犬種。このうち3犬種は生粋の狩猟犬、というのもスウェーデンの犬文化を物語っていると思います。スウェーデンはヨーロッパでも指折りの狩猟王国です。イェムトフンドとスウェーデンの狩猟文化についてはこちらのブログも参照にしてくださいね。

小型犬種をスウェーデンで飼う人は概して都市部に住んでいる人が多いように思われます。私のような田舎者がたまにストックホルムを訪れると、小型犬を連れている人の多さにびっくりすることもあります。まるで東京に来たかのよう!都市化すると、小型犬が増える、というのは世界共通の法則なのかもしれません。

スウェーデンにおける小型犬の人気者はなんといってもチワワですね。ダックスフンドも10位にはいっていますが、こちらには半々の割合で愛玩犬として、あるいは狩猟犬として飼われているタイプが混在しています。ダックスフンドにはコートのバリエーションと大きさによって9種類がいますが、そのうちコートがワイヤード(剛毛)で一番大きなサイズであるスタンダードダックスフンドがかつてスウェーデンでは圧倒的にメジャーでした。このタイプのダックスフンドは猟犬として使われています。最近は、日本でもダックスフンドの中では一番ポピュラーなロングヘアーのミニチュアダックスフンドが、スウェーデンでも愛玩犬として多く飼われるようになりました。

このように人気犬種を比較することだけでも、だいぶスウェーデンという国が見えてきたと思いませんか?



デニッシュ・スウィディッシュ・ファームドッグ

デニッシュ・スウィディッシュ・ファームドッグ。スウェーデンの人気犬種8位。デンマークとスウェーデンの南部にもともといた農民の犬。害獣退治などに使われていた。今では愛玩犬としてとても人気。見かけはジャックラッセルテリアに似ているが、性格もよく似ておりアクティブ!



フィニッシュ・スピッツ

フィニッシュ・スピッツ。17位。美しい犬種だが、愛玩犬としては飼われることはなく、北欧では生粋の狩猟犬。ヨーロッパオオライチョウといった大型のライチョウの狩猟を専門とする。



ドレーベル

ドレーベル。スウェーデン原産。こちらも決して愛玩犬として飼われることはない純粋な狩猟犬。ノロジカ猟に使われる。写真の犬には狩猟中いどころがわかるようGPSとアンテナが搭載されている。



犬種についてもっと知りたい人は私が昨年著した「増補改訂・最新世界の犬種図鑑」もチェックしてみてくださいね!



藤田りか子

藤田りか子

ドッグ・ライター、犬学セミナー講師。スウェーデン・ヴェルムランド県の森の奥、一軒家にてカーリーコーテッド・レトリーバーのラッコとラブラドール・レトリーバーのアシカと住む。人生の半分スウェーデン暮らし。趣味はドッグスポーツ。ノーズワークとガンドッグ・フィールド・トライアルのコンペティター。アメリカ・オレゴン州立大学を経てスウェーデン農業科学大学野生動物管理学部卒業。生物学修士(M.Sc)。犬のブログサイト「犬曰く」運営者。主な著書に「最新世界の犬種大図鑑」(誠文堂新光社)など。



文と写真:藤田りか子