THE VOLVO
LIFE JOURNAL

北欧と日本をつなぐスタッファン・ホルムの家具 2020/01/08

日本の文化を体験しユニークな着想で家具をデザインするスタッファン・ホルムさんのスタジオを取材しました。

ボルボが提案する、北欧の素敵な暮らし

あなたも北欧の美しさを生活に取り入れてみませんか



スタッファンさんは2012年に日本を旅してから「手しごと職人」の技にひかれ、現在も日本との交流が続いている。



「UDON うどん」という名の椅子など、日本の文化を体験し、ユニークな着想で家具をデザインするスタッファンさん。
楽しく、合理的で、美しいインテリアが生まれるスタジオを取材しました。



Staffan Holm

ヨーテボリ在住のプロダクトデザイナー。1977年スウェーデン生まれ。高校生の頃にクラフトマンシップに目覚め、棚をつくる工房で修行、家具工場で職人として4年勤める。アートスクールで絵画を学んだ後、ヨーテボリのデザイン工芸大学(HDK大学)に入学。卒業した2008年からデザインスタジオを設立。2009年にノルディックデザイン賞、2013年にブルーノ・マットソン賞など受賞多数。日本の職人とのコラボレーションが2014年からはじまり、今年も日本家具メーカー「Ariake有明」でキャビネット「KUMIKO 組子」などを発表。



日本とスカンジナビアのデザインを融合して

スウェーデン第2の都市ヨーテボリは、歴史的な建物が多く残る港湾都市です。家具デザイナーのスタッファン・ホルムさんもこの町を愛し、郊外の元紡績工場を改装した、レトロな建物にデザインスタジオを構えました。



左:1フロアを照明デザイナーと写真家と一緒にシェアしている。 / 右:元紡績工場をほぼそのまま使ったというデザインスタジオは、ガラスや壁に時を重ねた美しさがある。



スタッファンさんは、2009年に躍動感のある美しいテーブル「ニュートン」で、家具デザイナーとしてデビュー。たちまち注目され、2011年には重ねるとスパイラルになるスツール「スピン」で、雑誌Sköna hemのファニチャー・オブ・ザ・イヤーを獲得しました。「スピン」は日本でも、人気の北欧家具として販売されています。伝統的なデザインと現場から生まれるフレキシブルな発想がミックスしたスタッファンさんの家具。中でもユニークなのが、「UDON うどん」スツールです。



代表作のスツール「スピン」は、スパイラル状に重ねると、美しいフォルムが生まれる。



うどんのようなしなやかなカーブの背もたれで、椅子の美しさを完成しました

「日本に行ってからうどん好きになり、スウェーデンでも食べています。麺のふくよかなカーブをイメージした太めの背もたれが特長の椅子です」
スタッファンさんと日本をつないだのは、軽井沢でインテリアショップ・ナチュールを営む須長檀さん。ヨーテボリのデザイン工芸大学で一緒に学び、デビュー作「ニュートン」を共作しました。その後も2014年に、軽井沢彫りの職人とワークショップを開き、2017年には佐賀の有明の家具職人のプロジェクトに参加。「KUMIKO 組子」や「AIZOME 藍染め」など、日本の伝統工芸とスカンジナビアデザインの美しさをあわせ持つ家具をつくり話題になりました。



上:スツール「UDON うどん」は、少し太めの背もたれが、安心感と優しさのあるカーブを描く。2017年からスウェーデンのHem(ヘム)で販売。 / 下左:キャビネット「AIZOME 藍染め」は、佐賀の有明の伝統工芸の1つ藍染めを取り入れたデザイン。 / 下右:キャビネット「KUMIKO 組子」は、釘を使わないで木を組む、日本の伝統工法を使った。



手しごとは魂につながるもの



日本の手工芸品には、他の国にはない特別な美しさがあるとスタッファンさんはいいます。

「私は高校生の頃から木工職人に憧れ、専門コースで学びました。その後家具工場で4年間働いたのですが、無駄を省き合理性と利益を追求する家具づくりに疲れ、自分がからっぽになってしまったと感じた時期がありました。日本の手工芸品には、時間をかけていいものをつくる精神があります。緻密に木を彫り、理想の形に近づけようとする軽井沢彫りを見たとき、手しごとは魂につながるものだと感じました」

日本のこけしや茶筅などの工芸品もさりげなく飾られている。



日本の手工芸品には、表から見えない美しさがあります



部屋の中央はローテーブルの「ニュートン」。特長ある脚の曲線は、2つの木の輪を押したり引いたりすることで生まれる形から発想したもの。



左:レトロな家具も愛用している。 / 中:ダイニングテーブルと天井の照明はスタッファンさんのデザインによるもの。 / 右:ダイニングからのヨーテボリ郊外の眺め。



自宅には、須長檀さんと共作したローテーブル「ニュートン」が部屋の中心にあります。リズム感のある柔らかなカーブは「木の声を聞く」ことから生まれた形だといいます。子ども部屋には、楽しく2段ベッドにのぼれるロープや、子どもがつくりかえられるおもちゃ箱など、手づくりの小さな家具が活躍していました。
「日本の家具づくりの、たとえば釘を使わずに木を組んで格子をつくる組子のような、表からは見えない美しさも大切ではないかと思います。日本の職人の方たちとの出会いでは、そんな技や哲学を学ぶことができました。その感覚を活かして、スカンジナビアの暮らしに合った、新しい発想の家具をつくっていきたいと思っています」



左上:子ども部屋には寝るのが楽しくなるよじのぼりロープが。 / 右上:奥さんとともに子どもたちに絵本を読んであげるのが好き。スウェーデンの絵本やアメリカのモーリス・センダックの絵本がお気に入り。 / 下:愛車のボルボV90は、家具や道具を運ぶのに欠かせないパートナー。



人との出会いこそが、固くなりがちな自分の発想に転換を生み、ものづくりを豊かにしてくれるというスタッファンさん。今は旭川の工房との、新しいプロジェクトが進行しています。



今試作しているのは、日本の旭川の小さな工房が集まった旭川プロダクツアソシエーションのための折りたたみスツール。





通訳・コーディネート/佐藤園子 撮影/エリーサベット・デュンケル
MOE 2020年1月号(白泉社 )を再編集しています。