VOLVO OWNER’S INTERVIEW 松本尚教授編 2019/01/23
ボルボ XC60がラピッドカーとして、日本医科大学千葉北総病院に寄贈されました。ボルボオーナーでもある同院副院長、松本尚教授にモータージャーナリストの藤島知子さんがお話を伺いました

医療にはそれを支えるスタッフや体制、ツールが不可欠であり、そのツールに対する要求は厳しいものになります。例えば、救急搬送や医師のプライベートに使われるクルマも、シーンによって求められるものは異なります。
今回は医療に携わる目から見たクルマの「使命」について、日本のドクターヘリ運用の第一人者であり、長年のボルボオーナーでもある日本医科大学千葉北総病院副院長、松本尚教授にお話を伺いました。
インタビュアーは、自動車専門誌を始め、テレビやインターネットメディアなど幅広くご活躍中で、女性ならではの視点による解説も人気のモータージャーナリスト藤島 知子さんです。
日本のドクターヘリ救急医療の先駆者として
- 藤島さん
- テレビドラマや映画でドクターヘリの認知が高まりました。その医療監修をなさった先生に、2001年当時、まだ日本では一般的ではなかったドクターヘリを導入されたいきさつをお聞かせ願えますか。
- 松本教授
- 救急の現場で救命率を上げるには、とにかくスピード。患者さんが待っている場所へ、どれだけ早く到着できるかが勝負です。だからヘリコプターに乗ること自体が目的ではなく、その「速さ」を実現する手段として、ヘリコプターが選択されました。時速200kmのスピードが出せますから、半径50kmの場所に15分で到着できます。
- 藤島さん
- クルマだと25kmぐらいの距離でも30分はかかる場合があるので、そう考えると凄いスピードです。
- 松本教授
- 現在、日本では全国で年間25,000件ぐらいドクターヘリが出動していると言われています。ヘリコプターのスピードというメリットが広く認識された結果だと思います。一方でヘリコプターは夜間や悪天候の場合飛べませんので、そこは救急車などのクルマも利用していかないと救命体制が万全にはなりません。うまく併用していく必要があると考えています。
- 藤島さん
- ドクターヘリの運用については、様々な困難もあることと想像しますが、いかがでしょう。

- 松本教授
- 当初はドクターヘリそのものに理解を得られないなどの問題がありましたが、最近では多くの皆さまに認めていただいています。これからは費用の問題でしょうか。国や県からドクターヘリ運用に対する補助金が出て、そこからヘリコプターの運航会社に委託していますが、北総病院では当初の想定回数を大きく超えて年間1,200回以上出動していて、その経費はおよそ年間2億5,000万円の補助金を大幅にオーバーしているのが現状です。不足は我々自身がスポンサーや運航会社を集めたり、当院が支出してやりくりしています。
- 藤島さん
- そんな救急医療に携わる先生の信念や使命感、あるいはポリシーのようなものを教えていただきたいのですが。
- 松本教授
- 若い人にはよく話すのですが、仕事を楽しめ、と教えています。人の命を預かる仕事で「楽しむ」なんて言うと誤解されるかもしれないけれど、やっぱりイヤイヤ仕事をしてもうまくいかない。自分のやっている仕事を楽しむことで、パフォーマンスが上がります。それが僕らの仕事の場合、救命につながり、責任を全うすることにつながるのかな、と思います。

東邦オート(株)【ボルボカー幕張】からのサポートとラピッドカー
- 藤島さん
- そうした医療への取り組みの中で、東邦オート(株)【ボルボ・カー 幕張】様のサポートを受けられているとのことですが、どのような流れで協力していただけることになったのでしょうか。
- 松本教授
- 先ほどもお話したようにドクターヘリは迅速に駆けつけられる一方で運用に費用がかかります。ですから補助金以外にサポートしていただけるスポンサーが必要でした。ボルボさんには2014年から支援していただいています。それまでずっとボルボを乗り継いでいるご縁があったので、快く引き受けてくださいました。また、ボルボといえばやはり安全性を第一に考えている会社ですから、人命尊重の思いが重なる部分があったのだとも思います。
- 藤島さん
- そして今回、ラピッドカー※が東邦オート(株)様から贈呈されました。車種はXC60のD4 AWD、ディーゼルエンジンの四輪駆動ですね。
- 松本教授
- ヘリコプターとの両輪で救急活動が行えるラピッドカーは以前から導入していましたが、今回新しい車両が配備されて、本当に感謝しています。ドライバーの視線が高いSUVであり、四輪駆動によってどんな道路状況にも対応できるため、ラピッドカーの機動力をより高めてくれます。また燃費がいいディーゼルは給油無しで長時間活動できますし、もちろん運営上の経費削減にもつながります。そしてボルボだから基本的な安全性能が高いこともポイントです。
※ラピッドカーとは:
医師・看護師が救急現場に向かうための緊急自動車。現在運用されているドクターヘリ事業の補完目的で、日本医科大学千葉北総病院では2010年6月から導入されました。


激務を離れてクルマに求めるものとは
- 藤島さん
- そんな先生が、プライベートでお使いになるクルマに求めるものは何でしょう。
- 松本教授
- 何だろう…「ゆとり」かなあ。乗っていて楽しさや豊かさを感じたい。気持ちが贅沢になれるような。そうなるとやっぱり輸入車、という選択になりますね。これからは自動運転とか、どんどんオートマチックな方向に社会も進むと思うけれど、自分で運転する楽しさはなくならないだろうと考えています。安全と楽しさの共存がテーマになっていくのかもしれません。
- 藤島さん
- クルマが人に寄り添う一方で、ともすれば、変わり映えしないものになってしまうのではないかという危機感もあります。その点、ボルボは内外装のデザインの洗練性が高い評価を得ていますが、先進装備と居心地のよいインテリアなどを巧く共存させているのではないでしょうか。ちなみに、先生がボルボにお乗りになって感じる楽しさやゆとりはどんなものでしょうか?

- 松本教授
- ボルボの安全性についてはもちろん気に入っているのですが、エクステリアとかインテリアとか、趣味性の部分を聞かれてもピンポイントでは答えが出てこないかも。普段は何も気にせず乗っていますから。ボルボはそういったところの主張が強くなくて気負わずに乗れる点が、リラックスできて私にはちょうどいいのでしょう。
医療の緊張する現場から離れてプライベートな時間はリラックスしたいですよね。やはり安心感だったり、運転支援のおかげでラクだったり、そんな部分を評価しています。以前のクルマがXC60で、あれはアイポイントが高くてよかった。その前がV70を130,000km乗りました。安全性には全幅の信頼を寄せているし、実家の金沢まで6時間運転し続けてもまったく疲れなかった。ホントに助かりました。 - 藤島さん
- 現在ボルボでは全車に10種類以上もの安全装備・運転支援装備が標準装備されています。試験をクリアする上で備えた装備だけでなく、現実社会で起こりうる事故のリスクを減らす独自の予防安全技術を積極的に採用している点では、安全を最優先にしていることが感じられますね。ちなみに先生は具体的にどの機能に助けられていると感じていますか?
- 松本教授
- 高速道路ではACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)が欠かせないですね。あとはBLIS(ブラインドスポット・インフォメーション・システム)あれも便利です。車線変更の際、後ろの死角から来るクルマには気を使いますからね。
- 藤島さん
- ボルボに17年お乗りになっている先生は、アフターメンテナンスはいかがされているのでしょう。
- 松本教授
- それはもう、V70の頃からディーラーさんと担当者にすべてお任せです。クルマの難しいことはわからないので、専門家にお任せしています。クルマが快適でキレイならそれでいい。ボルボ・カー 幕張さんに全部お任せで、対応もパーフェクトです。急な点検とか、できる範囲でわがままも聞いていただけるし有難いです。

クルマ社会のこれからを見つめて思うこと
- 藤島さん
- ボルボでは死亡事故ゼロをめざしていますが、その理念についてどう思われますか。
- 松本教授
- ドライバーの心理まで含めた運転動態を分析して、安全に活かすのはもうすぐ実現しそうだと思いますが、物理的な事故をゼロにするのはなかなかハードルが高いかもしれないですね。ヒューマンエラーに対してどう対応していくかが課題だと思います。例えば歩行者の飛び出し、自転車の転倒など、クルマ側の問題だけではないわけです。
私たちは自動車メーカーと共同で医工連携の研究も進めています。人がぶつかった際に、クルマからクッションのような物が出てきて怪我を防ぐとか、そういうことをできないのか提言しています。死亡事故ゼロはみんなの願いでもあるわけですから、自動車メーカーだけでなく社会全体で考えるべきことだと思います。 - 藤島さん
- ボルボでは自転車や歩行者にも対応した自動(被害軽減)ブレーキを装備していますね。それと交差点で右折時に対向車を検知して自動(被害軽減)ブレーキを作動させる機能も世界で初めて開発しました。

- 松本教授
- 安全性がもっと高まれば安心して乗ることができて、販売にも貢献するはずです。どのメーカーもさらに力を入れるべき分野だと思います。
- 藤島さん
- これからのボルボに期待することはありますか。
- 松本教授
- 死亡事故ゼロを本当に実現できたら凄いし、それは見守りたいと思いますが、先ほども言ったようにそれは社会全体の問題ですね。もちろん安全を最優先にする姿勢は今後とも続けて欲しいし、それがクルマメーカーとしてのあるべき姿なのではないかと思います。これはお願いになりますが、頻繁にモデルチェンジしないでください。新しいのが出るとつい欲しくなりますから(笑)。
- 藤島さん
- 本日はお忙しい中ありがとうございました。


ボルボ・カー 幕張(東邦オート株式会社)
松本教授の歴代ボルボの販売・メンテナンスを担当。2016年より日本医科大学千葉北総病院のドクターヘリのスポンサー及び、2018年11月、ラピッドカーとなるXC60を寄贈。

松本尚
1987年金沢大学医学部卒業後。消化器外科を経て、1995年から救急・外傷外科に従事。2000年から日本医科大学千葉北総病院に勤務。2001年からフライトドクターとして活躍し、日本におけるドクターヘリ救急の第一人者となる。「コード・ブルー」の医療監修は、2008年放送の第一シーズンより務めている。

藤島知子
自動車関係のキャンペーンガールを経て、レースドライバーとしてモータースポーツの世界へ。 2018年は富士スピードウェイで行われている女性のプロレースシリーズ『競争女子選手権 KYOJOカップ』にシリーズ参戦。2002年より執筆活動を開始。レース活動で培われたドライブテクニックと、女性ならではの視点でモータージャーナリストとして活躍中。日本自動車ジャーナリスト協会 理事
PICK UPボルボからのおすすめ
-
2030年までにEVに完全移行。ボルボが目指す未来とは?
今回はボルボが新しく掲げた目標を紹介するとともに、その活動に共感する株式会社Looop代表取締役社長・中村創一郎さんに電気自動車と自然エネルギーの未来についてお話をうかがった。
2021/04/21
-
My STYLE with VOLVO Vol.3 秋山大輔/千葉佐原
プロサウナーの秋山大輔さんがVolvo XC90で千葉佐原をドライブ
- My STYLE with VOLVO XC90
2020/04/01
-
スウェーデンに暮らすエリーカさんの幸せ色のニット
温かみのある色とデザインでウールの服や小物をつくるニットデザイナー、エリーカ・オーベリーさんを訪ねました。
- MOE ボルボ・オーナー
2020/07/08