「ボルボ チームラボ かみさまがすまう森」にボルボが協賛 2021/09/22
チームラボとボルボのコラボレーション・アート作品も展示。

ボルボとチームラボが、「ボルボ チームラボ かみさまがすまう森」なるアート展を2012年7月から11月にかけて開催。舞台は、九州・佐賀の御船山(みふねやま)楽園。江戸時代(1845年)に、当時の佐賀藩武雄領主によって、池泉回遊式庭園として作られた50万平米の庭園だ。

武雄市御船山(たけおし・みふねやま)と、西麓に広がる御船山楽園
見ものは、「デジタルテクノロジーによって“自然が自然のままアートになる”」というコンセプトにのっとった展示の数かず。コンピューター制御された照明と映像のプロジェクションを使い、御船山楽園の森や池や巨石などを活かした劇的な演出を楽しませてくれる。
中心的な建物は、御船山楽園ホテル。「チームラボとボルボによるアート空間」が展示されている。SUV「ボルボXC40」が建物の壁を壊して屋内に入ってきたような表現が印象的だ。となりに、空間に立体的に書かれたというコンセプトによるディスプレイ作品が配されている。

ボルボXC40が“壁”を壊す「チームラボとボルボによるアート空間」(右手前が「生命は生命の力で生きているⅡ」というチームラボの新作)
XC40は、強いとか、破壊的とか、そういうイメージとは無縁。もっと都市型だ。いっぽう、走りは力強い。見かけよりずっとパワフルで、かつハンドリングがよく、運転好きのひとの要求にしっかり応えてくれる。
いまのXC40のラインナップは、マイルドハイブリッドの「B4」シリーズと、「プラグインハイブリッドT5」シリーズで構成されているので、たしかに、なにかを乗り超えていく力を持っているとしたら、既存のSUVの概念、といえるかもしれない。古い概念を壊して先へと進むのが、電動化を大きく推進するいまのボルボなのだ。
サステナブルな未来へと向かう力を有しているSUV。それがXC40の魅力といえるなあ、と「チームラボとボルボによるアート空間」を眺めていて、思ったのだった。
「チームラボとボルボによるアート空間」では、「生命は生命の力で生きている II 」と題された作品が、XC40のとなりに展示されている。生命や生きることを意味する漢字「生」を、チームラボが設立以来書き続けている空間に書く書「空書」で立体的に表現しているのが特徴だ。
観ていると、画面内で「生」の字がゆっくり回転。雪が降っている場面から見はじめ、そのまま眺めている、春が来たイメージだろう。字から芽が出て花が咲きだした。字がどんどん変化していく。自然の四季を表しているのだそう。

広い空間を使って、XC40のもつモダンな躍動感が、日本の古典的ともいえる美も取り込んだ作品と共存しているさまが、じっくり堪能できる。たいへん興味ぶかい作品だ。
実際の作品を眼にするまでは、チームラボはボルボをどう作品のなかに取り込んでいくか。私は興味しんしんだった。実際には、他では眼にしない独創性に富んだ作品として仕上がっている。
「長きにわたり続いてきた自然と人との営みを分断していた壁をボルボが突き破る(ように見せる)ことで、世界と時間との連続性が再びつながり、様々な時空が交差し重なり合う空間が創りだされる」
ようするに、人間と自然のつながり、過去と現在とのつながり、それらを空間の演出で、あらためて来場者に感じてもらおう、ということなのだろう。
2021年は、ボルボ・カー・ジャパンが協賛しているのは触れたとおり。
「自然とデジタルテクノロジーの融合により「長い時間の連続性の上にある生命」を表現する「チームラボ かみさまがすまう森」はボルボの目指すサステナブルでイノベーティブな未来をアートで体感していただけるものと確信しています」
2021年の「チームラボ かみさまがすまう森」に冠協賛した意義について、ボルボ・カー・ジャパンではこのように語る。
「ボルボは創業以来、安全を第一にクルマ作りを続けてきました。そしていま、気候変動への影響に少なからず関係する自動車メーカーとして、地球環境、サステナビリティの問題に正面から向き合い、クライメイト・ニュートラルな企業となることを目指しています。みんなが幸せを感じることのできる未来のモビリティ社会を目指して、安心・安全を中心に、地球環境に配慮した車づくりを推進していきます」
御船山ホテルには、高度成長期につくられた、いまでは使われなくなった施設がいくつもある。この「アート空間」もそのひとつだったそう。「(作品として仕上げるまでは)まるで時間が止まったような時空だった」とチームラボ。
チームラボは、長い時間の中で形作られた巨石や洞窟、森、そして時代ごとに人々がそこに意味を見出し、それが千年以上積み重ねられてきた場所、としてアート展の舞台となる御船山楽園を定義。
エンジニア、建築家、デザイナーなど、さまざまな才能を擁し、日本全国でのさまざまなアート展で、私たちを楽しませてくれているチームラボ。開催7回目となる21年は、新作を含む20作品以上を展示した。冒頭の、「チームラボとボルボによるアート空間」は21年の新作だ。
日暮れとともに、このアート展は“開幕”。9月14日から10月11日までは18時から22時30分まで、10月12日から最終日になる11月7日までは17時に開場して22時30分まで。開場は大きくいうと、さきにも触れた御船山楽園ホテルと、隣接する御船山楽園。

「具象と抽象 - 神木の森の入口」は御船山楽園の庭園と森との境界にある作品で、前に立っていると森のドアが開くように光が投影される
じっさいに訪れたとき、私は、雨の日は滑らない靴と、汚れてもいい服装で、などと事前に言われていた。じっさいに足を運んでみると、たしかに自然の地形を活かして造園された御船山楽園は、岩場があったり、滑りやすい地面があったり。
そこを抜けながら、要所要所で展示に接する。眼だけでなく、からだ全体で楽しむように構成されているのは、いちどでもどこかでチームラボのアート展を体験したことがあるひとにはおなじみのものだろう。
21年の新作のひとつは、「忘れ去られていた地下道の朽ち果てていく場に永遠に憑依する炎」。ホテル内でさいきん発見されたという地下道を使った作品だ。暗い地下道を進んでいくと、突き当たりに、炎を表す作品がある。
「シミュレーションした燃焼する炎の気体の分子の動きによって、空間上に線を描き、その線の集合体を、チームラボが考える「超主観空間」によって平面化し、炎を描いている」というものだ。
加えて、スマートフォンアプリ(teamLab: FIRE)を自分のスマートデバイスにダウンロードしておいて、作品の炎に近づくと、画面内に“炎がともり”、作品を持ち帰ることができる、という仕掛けだ。その炎を、他の人のデバイスに近づけると、炎がつながっていく(同じアプリが入っているばあい)。

地下道の突き当たりにある“炎”を自分のスマートフォンに入れて持ち帰れるうえに、その炎(の映像)を同じアプリを使う第三者とシェアすることができる「忘れ去られていた地下道の朽ち果てていく場に永遠に憑依する炎」(2021年の新作)
庭園から続く御船山の森の中にある「神木」も、21年の新作。樹齢3000年以上、日本の第7位の巨木で、御船山神社の神木となっている。根元がごつごつした樹皮に覆われており、内部は約22平米ほどの広さの空洞。石のほこらが祀られている。
神木へと続く竹林を歩いていく速度やペースによって、聞こえてくる音楽が変わる。ライトアップされた景色とともに、なんとなく神秘的な体験が味わえるのだ。

武雄神社の神木になっている樹齢3000年の大楠に向かって歩いていく速度で聞こえる音楽が変わっていく「神木」(2021年の新作)
これらは、21年に足を運んだひとだけが体験できる新作。もちろん、従来から話題を呼んできた作品の数かずは、ひきつづき味わえる。
たとえば「小舟と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング 」。庭園内の池の水面に鯉の群れを表す映像を投影する作品だ。鯉どうし、それに池に浮かぶ小舟と鯉はインタラクティブな関係で、たがいの動きに影響を受け合って動くのが観察できる。やがて、鯉の動きが早くなり、最終的には、1尾ずつの軌跡が線となって、水面に弧の模様を描く。そこが本当の池とは思えない。

「小舟と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング」
「生命は連続する光 - つつじ谷」は、庭園内に群生する久留米ツツジを使った作品。ツツジにあたる光は、来訪者が近くで立ち止まると、強く輝き、音色を響かせる。そして、光りは放射状にツツジに伝播し、音色を響かせながら、連続していくというもの。
群生のなかを歩いていると、ひとが近づくことで、ツツジにあたる照明がコントロールされ、植え込みが動物のような生命体としてざわざわと波打つようにみえる。

御船山楽園の名物、「久留米」「平戸」など約20万本のツツジが植えられた「つつじ谷」を歩くと光が反応して、つづきの群生が動くように見える
御船山楽園ホテル内で鑑賞(体験)できる作品はほかにもいろいろ。
展示室に足を踏み入れると、思わず声が出るほど照明が美しいのが「廃墟の湯屋にあるメガリス 」だ。かつて大浴場として使われていた空間を利用。そこにメガリス(巨石記念物)に模した角柱が何本も立てられている。
投影されるのは、1時間を通して、1年間の花々が咲いていく「花と人」と、人々がメガリスに近づくと水の流れが変化していく「憑依する滝群」だ。コントロールするのはコンピューターであるものの、来訪者の接近などで刻々と映しだされる映像が変わり、同じ繰り返しはないそうだ。

使われなくなったホテルの浴場(廃墟とされている)を使った「廃墟の湯屋にあるメガリス」では投影される画像が、ひとの動きで刻々と変わるインタラクティブ性をもつ
「グラフィティネイチャー - 廃墟の湯屋に住む生き物たち、レッドリスト」もやはり使われなくなった大きな浴場が舞台。国内において絶滅のおそれがある野生生物と植物がプロジェクションされ、平面表現ながら、生きているように動いていく。
来訪者は中を歩き回れる。サンショウウオ(のプロジェクション)は、人々にたくさん踏まれると“死ぬ”。花(同)は、人々がじっとしているとたくさん咲き、人々が踏んで歩き回ると散っていくように展開する。これもいつまでも飽きない美しさ。

「グラフィティネイチャー 廃墟の湯屋に住む生き物たち、レッドリスト」では絶滅危惧種生物をモチーフにしたデジタルインスタレーションで、投影された映像はひとに反応する
とまあ、展示については枚挙にいとまがない。なにしろ20作品あるのだから。もし訪れるなら、ツアーに参加するといいかもしれない。気づかなかったポイントなどを制作者の言葉で説明されるぜいたくな鑑賞が体験できるからだ。
佐賀・武雄は、21年夏には大雨による甚大な被害を受けた場所。被害をこうむった方がたには、衷心よりお見舞い申し上げます。さいわい御船山周辺は大きな被害がなかったという。武雄にはいい温泉があり、それも大きな魅力。
武雄温泉の建物は、かつて東京駅などを手がけた辰野金吾の設計によるもので、異国情緒があって、一説によると「千と千尋の神隠し」のモデルになったとか。これも見ものだ。「ボルボ チームラボ かみさまがすまう森」は、旅の目的地として、とても楽しい場所である。

「呼応するランプの森とスパイラル - ワンストローク」は御船山楽園ホテルのレセプションに設けられた作品で、人がランプ(ベネチアのムラーノ製)の近くで立ち止まっていると、最も近いランプが強く輝き音色を響かせ、その光は、最も近い2つのランプに伝播していく

小川フミオ
東京都大田区出身。ライフスタイルジャーナリスト。「NAVI」(休刊)「モーターマガジン」など自動車雑誌の編集長や、グルメ誌の編集長を務めたあと、フリーランスとして活躍中。ウェブサイトや雑誌などを舞台に、手がける仕事は、クルマを中心に、グルメやホテルや、インタビューなど広範囲。
文=小川フミオ 写真=teamLab
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